「2つの異なる孔のこと」について書こうとしたこと

明日には読んでおきたい1章と、次の週末までに読んでおいた方がいい1冊がある。しかし、前者は遠く離れた大学の研究室に置きっぱなしで、後者はまだ手に入れてすらいない。さっき本屋に行って、その本を見つけたのに、結局買わずに出てきてしまった。


1年半ほど前、その本屋で働く人に、なにか入荷した方がいい本はないかと尋ねられ、少し悩んでから尊敬する建築家の作品集を推薦した。ほどなくしてその本は陳列され(律儀に面陳されていた)、今日、無くなっていた。とても喜ばしいことだった。でもほんとうは、自分が書いたものを推薦できれば何よりも良かったのだと思う(あるいは、それは品性を欠いたことなのだろうか)。

それはそうと、お勧めした身にもかかわらず、今日無くなっていたあの本は、最初に入荷されていたあの1冊だと考えていた。つまり、ただ1冊が入荷され、それがずっとそこにあって、何かの拍子に誰かに連れて帰られたのだと考えていた。しかし、僕がその本屋に行かないあいだにその本が売れ、新たに入荷されるということが繰り返されていたのかもしれない。あるいは最初に何冊も入荷していて、それがめでたく無くなったのを目にしたのが今日だったのかもしれない。店の在庫管理をしているわけではないのだから、真偽は不確かで不明のまま。どちらにせよ、なんだか責任を果たせたような気がして嬉しかった(売れないと考えて陳列しなくなったのだとしたら悲しいし、その場合は僕が買いたい)。

そしてこれは一般論だが、「無いこと」を上手に認識することはとても難しい。それは決定的に時間と関わる問題になるから。

それはそうと、読むべきものがある。そういう現実はあるのだけど、ついつい『風の歌を聴け』を読み返して(先日も同じことをした)、自宅の改修について考え、なんだか奇妙に多幸感のあふれるハウス・ミュージックのミックスを聴いている(というよりも見ている)。

久しぶりに、音楽に包まれた空間で会話を少なくして過ごしたいし、楽しく料理をつくりたい。

そう、最近は皮と芽がついたにんにくを使って料理をすることに取り憑かれていたのだけど、有識者に食べ過ぎは良くないと注意され、少し控えめにしようと考えている。にんにくを使わず、それでいて楽しい料理の仕方を考えないといけない(きっと、いくらでもある)。生姜とかどうなんだろうか。スパイスも良いかもしれない。食材というよりは、そのベースとなる何かで楽しむことばかりをイメージしている。


さて、前段が長くなって良い具合に日が傾いている。外に出たい。

今日は気分転換に「2つの異なる孔のこと」について書こうとしていた(残念ながら、読まなければいけないものとは関係がない)。それは単純化すれば、「私」がよく動く多孔性と、「私」がそれほど動かない多孔性について。前者を認めながらもその安易さと危うさを、そして後者の困難さとその意義を、あらためて考えたかった。例によって、少し抽象的に書かざるを得ないだろうと思っているのだけど、人も事もうごめく年度末にぴったりのテキストだと思っていた。建築や場所、空間の話であって、自宅の改修と密接に関わることも、今書きたいと思う理由の1つだった。

そして、これも修士論文の副産物だった。わりと早い時期から考えていたことで、そのときのメモ書きを起点にしていったん書いてみようと思っていた。

でも今日はもう満足したので、イメージだけを残してまたいつかの日に。早い方がいいのだけど、また今度。

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