Lilies of the Field
ある先輩が薦めてくれていた Lilies of the Field という映画を見た。邦題は『野のユリ』。その先輩のお名前はなにかと見かけるのだけど、お会いできたのはあの1度だけ。また会えたら、考えたことを伝えたい。
共同することの困難さと独りに閉じていくこと。またその先で、つくることの具体性を通じて他者に開かれていくこと。
これらのことを、平易簡潔だが底深いストーリーの中に巧く落とし込んでいる素晴らしい映画だった。
なにかをつくること、あるいはつくったことを通して他者に開かれていく様は、だいたいにおいて素晴らしくて、勇気をもらう。
その一方で、物語の進展とともに Sidney Poitier 演じる主人公の Homer が、ある種の権威のように紹介されたり、賞賛されたりする様子が描かれるのだけど、その際に見せるバツの悪そうな顔が印象的だった。(教会を建てる、というこの映画の本筋の中で、彼は一匹狼的な施工者から、次第に皆のまとめ役、いわゆる「建築家」のような側面を得ていく)
紆余曲折を経て教会は竣工するのだけど、その初めてのミサの前夜に彼はその場を発つ。彼にとって大切なのは、竣工を祝ってスピーチをすることでも、ましてやその功績を賞賛されることでもないだろうから。(そもそも彼は放浪者であって、たまたまその場所に寄りかかったに過ぎなかった)
そしてこの去り際には、映画を全体を通して重要な役割を果たしていたように思われるゴスペルソングの「Amen」が高らかに歌われる。これが良い。湿っぽさのないラストシーンの中で、彼は完成した教会を見て「Hallelujah(ハレルヤ)」と歌い、車のエンジンをかける。なかなか感動的な切断点だった。
あとはこの「Amen」の直前に、これまた映画の中で繰り返される英語のレッスンシーンがあって、そこもまた印象深いのだけど、その話はとっても長くなる気がするのでまたの機会に書きたい。
いつか見返したくなるだろうなと思う映画だった。